「エゾノリュウキンカ」は雪が消えるとまもなく、まだ氷のように冷たい水が流れる定山渓の沢沿いに鮮やかな黄色の花を咲かせて春を謳歌する。
茎が立ち上がり、花が黄金色であることが本州のみに自生している「立金花」の名の由来で、その変種とされる「エゾノリュウキンカ」は北海道及び東北の亜高山帯に自生する多年草である。アイヌ語は「プイ」。
「エゾノリュウキンカ」は「リュウキンカ」に比べてずっと大形になり、高さ50~80㎝になる。水辺に大群落をつくることがある。
茎は太く軟らかで、株立ちになるが、内部が空洞で簡単に折れる。根出葉は長い柄をもち、腎円形で大きく、基部が深くへこむ、縁には細かな三角状の規則的な鋸歯があり目立つ。茎葉には根出葉より小さい。茎も葉も無毛で艶がある。
茎の先には径3.5㎝ほどの黄色の花を4~8個つける。花弁のように見えるのは、がく片でふつう5枚あり、時に裏側が緑色を帯びる。花期は5~7月。
谷地(もとアイヌ語で沢などの湿地の意)に好んで生えることと、蕗の葉に似ていることから、北海道では「谷地蕗(やちぶき)」の別名で呼ばれることが多く、また北海道特産の山菜として開拓時代から利用され親しまれている植物である。
「春」は黄色の花の微笑から」という季節を寿ぐ言葉があるが、「エゾノリュウキンカ」は「フクジュソウ」「ナニワズ」「キバナノアマナ」などとともにその代表であろう。いずれも早春の陽光に輝く黄花が美しい。まだ半睡状体の山の中で、雪解け水が流れる沢沿いにふんだんにまき散らされた「エゾノリュウキンカ」の花々は星のように煌めいて群生地では天の川の趣である。
この季節、寒気の思わぬ逆戻りに不機嫌になったり、心も落ち着かないが、早春のひだまりに弾けるごとく咲く「エゾノリュウキンカ」の花に逢えば心も黄金になり、自然に喜びの挨拶と微笑みがこぼれおちる。定山渓の人気のない沢沿いの小径もまんざら捨てたものではない。
Information
- 科名・属名
- キンポウゲ科
- 花期
- 4~6月
- 花の色
- 黄色・黄金色
Category
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 4月, 5月, 6月
- 色
- 黄