「ヒトリシズカ」は高さ15~30㎝になる無毛の多年草。短い根茎から何本もの茎を立てる。葉は茎の上部に接して十字対生するので輪生状に見える。茎頂に花穂が1本つくが花弁はない。花期は4~5月。深緑色でつやつやと光った若葉に包まれて花穂が現れてくるところに妙味がある。日本全国の低地から山地の明るい林内や林縁に自生する。名前で得をしているといわれる「ヒトリシズカ」は「吉野静」や「眉掃草(まゆばきそう)」の別名もある。
「ヒトリシズカ」と同じ仲間に「フタリシズカ」がある。「フタリシズカ」の花穂はふつう2本だが3~5本立つこともある。花弁もがく片もない。花期は5~6月で「ヒトリシズカ」より少し遅く咲く。
静御前の「義経恋慕の舞」
春の森の落葉の間から4枚の葉に包まれて立ち上がる1本の白い花は、あまりにも清楚でゆかしく和名のとおり、静御前の「義経恋慕の舞」を想像させるにふさわしい姿をしている。
静御前は容姿端麗で歌舞に優れていたという。義経とは吉野山で訣別後、捕らえられて鎌倉に送られ、鶴岡八幡宮で源頼朝、北条政子らを前にして鬼気迫る「義経恋慕の舞」を舞ったことは、時代を超えて日本人には良く知られた話である。
「吉野山 峰の白雪 踏み分けて 入りにし人の跡ぞ恋しき」
これは静御前の辞世の歌である。
源義経と悲運を共にした静御前には幽霊が付きまとっていたといわれる。茎頂の白い2本の花穂のうち1本は静御前の幽霊で、年々幽霊が増えていると怖がられながらも探し求められている「二人静」である
謡曲『二人静』は静御前の例が吉野山で若菜摘みに出た女に乗り移り、二人で同じ衣装を着けて舞を舞い、義経が都を追われた時の様子を切々と語るというもの。
「義経恋慕の舞」、別離の哀しみの舞である。
場面変わって、満開の桜の下、静御前の鼓が朗々と響く。その音にひかれて白狐が現れる。白狐は凛々しい若武者に化ける。爛漫たる花吹雪。変幻自在の白狐と華美艶麗の静御前が延々と舞い戯れる。観客は思わず春に呑み込まれる。なにもかもが霞の中に消え失せる。聞こえるのは、川瀬を流れる水音だけ。
何も知らずに、「ヒトリシズカ」や「フタリシズカ」の花を見れば、そんなに美しく感じないと思うが、名前や名前にちなんだ物語を知ってしまうと美しく見え、哀れを誘われ、愛しさが増して、思わず花を撫でている。
인포메이션
- 科名・属名
- センリョウ科
- 花期
- 4・5月
- 花の色
- 白
카테고리
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 4月, 5月
- 色
- 白