雪のように白く大きなミズバショウは早春のみずみずしい感覚で、今では外国からの観光客にも人気だが、この純白の部分は仏炎苞(ぶつえんほう)といい、花ではなく葉が変形したものである。仏炎苞は下部は筒状、上部は舟形でこの通信にサトイモ科特有の肉穂花序といわれる黄色い円柱状の軸があり、点々とつく淡い緑色の小さなつぶつぶが花である。一つ一つから花粉が出ていて黄色の一本の棒のように見える。花期は4~5月。
湿原の人気者
多雪地の水辺に群生する「ミズバショウ」は本州では6・7月頃に、高山帯で雪解けを待って咲き出す夏の花で、早くから山好きの若い人たちに人気があり、特に尾瀬ヶ原のものが有名だった。
本州中部以北の山地湿原に自生する大型多年草で、種から花が咲くまで5年以上かかる。花が終わると葉がめきめきと伸び出し、後に幅30cm、長さ1mにもなる。このものものしいまでに巨大で長い葉が、中国原産の芭蕉に似ていることと、水辺に生育することが和名の由来。アイヌ語名はパラキナ(幅広い草の意)。太い根茎や肉穂花序に含まれる毒性分は主として蓚酸カルシウムであるが、アルカロイドのリシカミンなども含み、食べれば下痢や皮膚炎を引き起こす。
ヒグマの好物?
一方、定山渓はじめ北海道ではどこにでもある、ありふれた花だったので、あまり関心をもたれなかった。
「ミズバショウ」は高山性植物というより、むしろ北方性のもので、小暗い林の中などでは不気味に見えることもあり「ヘビノマクラ」と呼ばれたり、ヒグマの好物と思われて、積極的に排除されたりしていた。明治の頃、冬眠穴から出てきたヒグマが、この根を掘り返して食べているのを見た開拓者が食べたところ、ひどい口内炎にかかったと言う話が残っている。
ヒグマはそのことを知っていて、下剤がわりにミズバショウを食べ、さかんに排糞をする。まず腹に詰まっていたものを出すのが、冬眠明けの最初の仕事らしい。因みにいえば、葉や仏炎苞は豚が好んで食べる。葉は漢方の生薬として発汗剤に利用される。ミズバショウ属は世界に2首だけで、日本を含めた東アジアと北アメリカに1種ずつ分布する。北アメリカ原産の仏炎苞は黄色である。
信息
- 科名・属名
- サトイモ科
- 花期
- 4・5月
- 花の色
- 白
分類
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 4月, 5月
- 色
- 白