ギンリョウソウは山地のやや湿り気のある落葉の多い腐葉土に生育する。定山渓では朝日岳や親水公園などで多く見られる。葉緑素を持たず、光合成もせず、根に付着した地中の菌類に寄生して栄養を得ている、「菌寄生植物」または「多年生菌従属栄養植物」と呼ばれる。菌類は樹木と共生関係にあるので、菌類に寄生しているギンリョウソウは、間接的には樹木の寄生植物ともいえる。定山渓での対象となる樹木はミズナラで、ナラタケ菌に寄生していることが多い。
万緑の中の白一点として木下闇で異彩を放つギンリョウソウは全草が「ろう細工」のような透明感のある銀白色で、その幻想的な姿形が竜のようだと「銀竜草」と命名された。花期は6~8月。
ギンリョウソウは一株から10㎝ほどの茎が数本直立し、茎には葉が退化した真っ白い鱗片がいくつも互生して貼り付き、下部は重なる。
花は斜め下向きから横向きに1個つき、長さ2㎝ほどの筒状である。花弁は3~5枚。がく片は2~3枚ある。おしべは黄色で10個、めしべは先が広がり、紫色を帯びる。花には香りがないが、多量の蜜を出して、昆虫を呼び寄せ、花粉を運んでもらう。花が終わると全草が黒く腐ったように枯れてしまうが、球形の果実(液果)はかなり後まで白いままである。
森の妖精vs幽霊草
竜というよりも、壊れやすいガラス細工のように見える。薄暗い林床に生え、白く透き通ったような感じから、「森の妖精」と愛称で呼ばれる一方「幽霊茸」「幽霊草」の別名で呼ばれることも多い。確かに、生きている場所や色・形からキノコの一種に見えなくもない。中国名は「水晶蘭」で漢方の生薬名でもあり、強壮、強精や鎮咳作用があるとされている。漢方医療書によると全草にモノトロペイン、β-システロール、オレアノール酸、ウレソール酸、ブドウ糖、ショ糖、果糖を含むという。
竜は古代中国人が想像した変幻自在の霊獣で、頭に角があり、胴は大蛇のようで鱗があり鋭い爪のある四足をもち、春分には天に昇り、雲となり雨を降らせ、秋分には水と踊って滝となり、淵に潜むといわれ、水を守る神とされる。雨の日の定山渓の森で、ギンリョウソウの小さな竜神とささやき交わすのも一興といえる。雨に濡れたギンリョウソウは潤いを増し、真っ白に輝いて、俗世界とは縁のないような雰囲気を漂わせていて、思わず両手を合わせて拝んでしまう。ギンリョウソウは実に神々しい山野草である。
Information
- 科名・属名
- ツツジ科(旧イチヤクソウ科)
- 花期
- 6~8月
- 花の色
- 白
Category
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 6月, 7月, 8月
- 色
- 白