「エゾエンゴサク」は太陽の光が降り注ぐさ早春の林床を水色や青紫色に染めて大群落をつくる。
高さ10~25cmで、葉も花も変異が大きい多年草。葉は3出複葉で、小葉はふつう楕円形だが、線形もある。花は2cmほどで形もつき方も変わっている。茎の先に多数、同一方向に偏ってつく。大きく前方が唇のように開き、広報が蜜のたまる『距』という袋状になっている。下側の花弁はより小さく、その間にある2枚の花弁は先が合着して雄しべを囲んでいる。
花の色は、青、紫、桃色などの濃淡さまざまの色彩が豊かでまれに白花も見つかる。水色の花弁に紅色の斑が入ったものまである。青い花はリトマス試験紙と同様に、酸性に反応して赤くなる。花期は4~5月。
昆虫とエゾエンゴサクとの密接な関係
「エゾエンゴサク」は受粉をマルハナバチ類に全面的に依存し、その共生関係に応じて花弁の形を進化させてきた植物である。
4月に咲く花の開花期間は20会場と長く、5月に咲く花の開花期間は5日以下と急激に短くなる。その理由は、受粉を助けてくれる「マルハナバチ」が10℃以下では活動しないからといわれる。
果実は豆のようで中の種子には「カタクリ」などと同じようにアリが付いている。「エゾエンゴサク」の種子分散の役割もアリが果たしている。
『延胡索』とは、漢方の生薬名で、球根(塊茎)を蒸して天日で乾燥させたものを鎮痛薬とし、特に生理痛に効果があるとされている。
「蜜吸花(みつすいばな)」の愛称もあり、ケシ科では唯一食用となる植物である。花も葉もさっと湯にくぐらせる程度にして酢の物にすると、甘くさわやかな風味を楽しめるという。アイヌ語名は「トマ」。
「エゾエンゴサク」が群生して花開くこの時節、どんなに長時間、森の中を歩いても飽きることがない。冬の間、体とともに固くなっていた心がやわらかく解きほぐされ、生気躍動する。降り注ぐ太陽の光も心地よく、さらさらと流れる川のせせらぎを思わせる。葉をすっかり落としてしまった森に、少しずつ甦ってくる「みどり」、懐かしくいとおしい色彩は他のなにものにも代えがたい宝物である。この時節の色彩には強烈な印象ではなく、パステル調の柔らかさと優しさを感じる・
その典型が「エゾエンゴサク」である。
Information
- 科名・属名
- ケシ科
- 花期
- 4・5月
- 花の色
- 白・青・紺・紫
Category
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 4月, 5月
- 色
- 白, 紺・藍色, 青, 紫