高さ20~40㎝の個体変異の大きい多年草で、「雨降牡丹」や「山蕎麦」の別名がある。
10年目に開花してからその後30年以上も花を咲かせることから「延齢草」と命名されたが、一度果実をつけると次の年からは根に栄養を蓄え、再び花をつけられるようになるまで、葉だけの生活に戻るものが多い。
地中の塊茎から出た茎は分枝せず、先端に柄のない大形の葉を3枚輪生する。
花は横向きになり、あずき色、または緑色のがく片が3枚つく。花弁はない。花期は4月下旬から6月。果実(子房)は、ふつう緑色で、「アオミノエンレイソウ」とも呼ばれる。果実が黒紫色のものを品種「クロミノエンレイソウ」、赤色のものを品種「アカミノエンレイソウ」という。
種が落ちて、翌春は根だけが1~2本出る。2年目に初めて発芽して淡黄色の小さな歯を1枚つける。開花期間は1~2週間程度である。15年目には一つの根茎から2本の茎が出る。20年目になると一つの根茎から3本の茎が出る。
種子には、「カタクリ」などと同じく、甘いゼリー状のエライオソームが付いていて、蟻が種子分散の役割を担う。
エンレイソウの肥大した地下茎は陰干しにして煎じ、健胃剤、催吐剤として利用されたが、有毒植物でもあり要注意。
果実だけは甘酸っぱく美味しく食べられるが、多量に食べると下痢を起こす。アイヌの人たちは、これを「エマウリ」と呼んで食用とした。
極めてゆっくりと成長するエンレイソウの仲間は、変種や自然交雑種が多く、個体変異も著しい。「ミヤマエンレイソウ」(深山延齢草)は別名「シロバナエンレイソウ」といい、茎の先端から花柄を出し、清楚な白花を1個つける。花は横向きか斜め下向きに咲く。花弁とがく片は同じくらいの長さである。子房が暗紫色のものは、「エゾミヤマエンレイソウ」といい、「ミヤマエンレイソウ」の変種。「ムラサキエンレイソウ(紫延齢草)」は定山渓に多いことから「定山渓延齢草」の愛称をもち、「ミヤマエンレイソウ」の赤花品種である。花弁の色が初めから赤紫色でよく目立ち、形は「ミヤマエンレイソウ」と同じ三角状で先がとがる。
「オオバナノエンレイソウ」(大花延齢草)は群生することが多く、花の大きさが「ミヤマエンレイソウ」の倍以上もあり、上向きに咲く白い花弁はふつう広卵形で3枚、先がとがらないが変異が多く、細長いものもある。子房に赤い斑点があるのが特徴。
北海道大学の校章は扇風機の羽みたいに見えるが、「オオバナノエレイソウ」をモチーフにデザインしたものである。
インフォメーション
- 科名・属名
- シュロソウ科(旧ユリ科)
- 花期
- 4~6月
- 花の色
- 白・赤
カテゴリ
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 4月、5月、6月
- 色
- 白、赤