カタバミといえば、道端にありふれた黄色い小さな花を思い浮かべるが、コミヤマカタバミは清楚な白い花を咲かせる。カタバミの仲間では最も標高の高い所に生え、亜高山帯を代表する多年草で、針葉樹林下に群生することが多い。本州、四国に分布するミヤマカタバミより小型で深山幽谷に生育することが和名の由来である。花は直径1.5㎝ほどで、基部に黄色班が入る。5枚の花弁はふつう純白だが、淡紅色の筋が入る個体も少なからず見られ、時に花弁全体が微紅色に染まることもある。花期は5月下旬から7月。
コミヤマカタバミは地下に細長い根茎を伸ばし、その先端につく多数の鱗片の脇から長さ3~10㎝の葉柄と花柄を立ち上げ、高さ5~15㎝になる。葉はまるみを帯びたハート形の小葉3枚からなる複葉である。
雄しべは10本。果実(蒴果)は卵球形で径5㎝ほど。種子は白い外皮に包まれていて熟すと、はじきだされる。
コミヤマカタバミはカタバミやエゾタチカタバミなどと同じように、睡眠運動をする植物である。カタバミの仲間は光の強弱に敏感に反応するため、日が陰ったり、夜になると葉を折りたたむ。それが、葉の片側半分が食べられてしまったように見えることから「カタバミ」と命名され、「傍食」「片喰」の漢字が当てられた。因みにコミヤマカタバミの英名は、“Sleeping Beauty”で老仙女のまじないで100年刊眠った美しい王女、『眠れる森の美女』のことである。
またカタバミの仲間は全草に集散を多く含んでいるため、真鍮や十円硬貨などの小銭を磨くと、ピカピカに光り輝くので、「ぜにみがき」、さらに鏡を磨くのに用いられたことから「かがみみがき」の異名もある。
「コミヤマカタバミ」をはじめ、「ツマトリソウ」や「ナンブソウ」など、深山幽谷に咲く花々は清楚な白色が多いのだが。淡紅色を帯びるものもあり、それらの植物は平地の植物とはどこか違っていて、薄化粧を施したかのような色香を漂わせて、かわいらしく美しい。色が鮮明なのは昼夜の温度差が極めて大きいことによる。深山幽谷の厳しい環境に耐え、比較的低い温度で生育し、高山植物とも共通するところが多い。短期間に生長し開花するが一年間に生長する量は少ない。色とりどりの深山幽谷の花が、それぞれの特徴を誇りながらも屈託なく咲いている定山渓というところは、まさしく山野草の楽園、パラダイスである。楽園の花は気短だ。まだ十分にきれいなのに惜しげもなく花を散らしてしまう。
インフォメーション
- 科名・属名
- カタバミ科
- 花期
- 5-7月
- 花の色
- 白・時にピンク
カテゴリ
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 5月、6月、7月
- 色
- 白、ピンク