定山渓の森 Encyclopedia of flora and fauna
動植物図鑑

オカトラノオ(岡虎尾)

オカトラノオは山地丘陵の日当たりの良い草地を好む高さ1mほどになる多年草。地中を伸びる地下茎から茎を立ち上げ群生する。茎にはまばらに毛が生える。互生する葉は長楕円形で長さ7~12㎝。全縁で両端がとがる。
花は白色で。茎の先に一方に偏って総状に多数つく。花序の上部は弓なりに曲がる。花冠は花弁状に深く5裂して径1㎝ほど。雄しべと花冠の裂片は対生している。これはサクラソウ科の特徴の一つ。花期は6~8月。つぼみの時も美しい。

オカトラノオの和名は上部が垂れ下がった太く、長い花序を虎の尾に見立てたもので、山地の丘のような明るいところに生えていることによる。ゴマノハグサ科の「クガイソウ(九蓋草)」も「トラノオ」の別名をもつ。定山渓で見られる『エゾクガイソウ』の別名は「エゾトラノオ」。

オカトラノオの花はきっぱりとした白さ、濁りのない白さで、一粒一粒、優しい表情を見せる。毅然とした表情には、花の矜持(きょうじ・・・自分の能力を信じていだく誇り)をも感じさせる。足元にうずくまって眺めていたいような清雅な白さであり、気分を明るく爽快にしてくれる花である。圧倒する緑を背景に、オカトラノオの白い花は強く心に残る。

真夏の定山渓。小天狗岳には霞がかかり小樽内川に吹く風は妙に生あたたかい。どこからともなく甘い花の香りが漂ってくれば、いやがうえにも異界を逍遥している心地になる。夏の暑さに、定山渓の花たちも疲れて息切れの様相をみせている中で、オカトラノオの鮮麗な白い花が生彩を放ち、数多くの蝶たちを集めて、まるで踊るように揺れている。
獣の尾のように見える花に群がる一団は、豹紋蝶(ヒョウモンチョウ)の仲間や姫蜆蝶(ヒメシジミ)。

多くの花は、協力者の昆虫、時には小鳥を誘うために色とりどりに、それぞれの姿かたちで、表情豊かに美しく装って咲いている。葉を茂らせ、美しい花を開き、身を結ぶのはみなそれそれの種族を残し、殖やしたいからに他ならない。オカトラノオの花はブラシ状花と呼ばれ、どんなタイプの昆虫でも蜜を採ることができるような、姿かたちをしている。実に親切を尽くした対応で虫たちを迎えている。万緑を背景に、いのちあるものの光り合う定山渓の夏である。

インフォメーション

科名・属名
サクラソウ科
花期
6~8月
花の色

カテゴリ

分類
花・植物
季節
6月、7月、8月
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