「ツマトリソウ」は北海道、本州、四国の亜高山から高山に生育する多年草で、湿った場所を好む。高さ7~20㎝。
白い糸状の地下茎(根茎)が長く地中を這う。直立した茎の上部に5~10枚の葉が、やや輪生状につく。葉は長さ2~7㎝で、先がややとがり、広披針形で全縁、丸みを帯びる。花は茎の上部の葉腋から伸びた1~3本の細長い花柄につき、おのおの1花を上向きに開く。一見すると、花弁6~7枚の離弁花に見えるが、「サクラソウ」の仲間であるから、一つにまとまった合弁花である。深裂の合弁花は白色で、皿形に広く開き、真横から見ると、極端に平たくてびっくりする。花冠裂片は長楕円形で先がとがり、互いに螺旋状に重なりあっている。ごくまれに、花冠裂片の先端が丸いタイプや微紅色に縁取りされた個体、あるいは全体がほのかな薄紅色に染まった個体が見られる。花期は6~7月。 果実(蒴果)は小さな球形で、熟すと縦に裂け、種子を散らす。別名ツマドリグサ。
上品で端正な美しさが魅力の「ツマトリソウ」は植物愛好家の人気の的で「定山渓の星」と愛称され親しまれているが、定山溪に生育している「ツマトリソウ」は貴重になっている。
「褄取草」の命名者は『牧野富太郎』博士(1862年~1957年)。植物一筋の生涯で「植物分類学の父」「植物界の泰斗」と呼ばれ、植物学史に大きな足跡を残した世界的な植物学者である。「花びらの先が、ほんのりさくら色をさしているのは、初めて左褄を取るようになって、つまり芸者になって、初座敷を勤める際に恥ずかしさのあまり頬を赤く染めるのと似ているから、褄取草なのだ。」と博士はいう。「褄取」とは裾の長い着物の下端の部分を手で持ち上げること、「左褄(ひだりつま)を取る」とは芸妓(げいぎ)になることをいう。
「ツマトリソウ」の花は確かに可憐で初々しくて経験を積んだ玄人芸者の老獪さや妖艶さは微塵も感じられない。花の色はほとんどが輝くほどの美しい白で、さくら色に染めた個体には実際なかなか出会うことはできない。
「ツマトリソウ」にそっくりで、高層湿原に生え、全体が小形で葉が小さく先がとがらず丸いタイプのものを変種「コツマトリソウ(小褄取草)」という。
インフォメーション
- 科名・属名
- サクラソウ科
- 花期
- 6・7月
- 花の色
- 白
カテゴリ
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 6月、7月
- 色
- 白