定山渓の森 Encyclopedia of flora and fauna
動植物図鑑

ベニバナイチヤクソウ(紅花一薬草) 

 「ベニバナイチヤクソウ」は花の色が淡紅色で、「イチヤクソウ」の仲間では、一番華やかな山野草である。「ベニスズラン」の別名をもち、「シラネアオイ」と同様に「湯上り美人」の異名もある。

 山地の明るい林内や林縁に生育する常緑の多年草であるが、本州では標高1,000m以上の山にしか自生していない。地下茎がよく伸びて群生する。高さ10~25㎝。長い柄のある葉は、下部に集中し、葉身は厚みがあり、長さ3~5㎝の広楕円形または卵状楕円形で、艶がありやや硬質。縁には低い鋸歯がある。裏面は紫色を帯びる。花は上部に7~15個下向きにつき、花冠は深く5裂するが、合弁花だから基部がくっついている。花の直径は12~15㎜。花柱(雌しべ)は長く、花期は6~7月。

 定山渓で見られる「一薬草」の仲間には、他に「コイチヤクソウ」、「ジンヨウイチヤクソウ」などがある。「イチヤクソウ」の仲間は根が細く、土の中から独自に十分な栄養を吸収することができないので、一種の根菌と共生し、根菌による有機物の分解によって得ることのできる養分で生育している菌寄生植物である。従って移植や栽培は大変むずかしい。

 「ベニバナイチヤクソウ」はふつうにじんだような紅色をした小さな花だが、生育環境によりほとんど白に近い薄い桃色から紫がかった濃い紅色までと、赤の濃淡に変化が見られる。赤は最も強い色であり、森の中では緑と敵対する補色の関係にあるので、ますます際立ち、よく目立つ。けれども緑と対立することなく調和しているというのが面白い。しかも「ベニバナイチヤクソウ」は晴れの日よりも曇り空が似合う花である。

森のくすり屋さん

 「一薬草」は、この草一つでいろいろな薬理効果があることから命名された。「一薬草」の仲間はどれもタンニンを多く含み、薬効が大きく、民間療法で切傷、止血、虫さされ、蛇の咬傷、すり傷などに葉の搾り汁を用い、乾燥させた葉は脚気の薬として煎じて飲むという。さらに抗菌作用や利尿作用もあるといわれ、医薬品の乏しかった時代は「一薬草」の仲間が一番の薬草だったようだ。漢方では全草を乾燥させたものを「鹿蹄草(ろくていそう)」と呼び、避妊薬に用いられ、煎汁は脚気や利尿剤として利用される。

インフォメーション

科名・属名
ツツジ科
花期
6~7月
花の色
白・赤・ピンク色

カテゴリ

分類
動物
季節
6月、7月
白、ピンク
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