二輪、寄り添って咲くことから「ニリンソウ」の名がついたが、花は二輪とは限らず、一輪だけのものや3~5輪のものもある。形も変異が大きい。白い花弁上のがく片が5~7枚あり、ときに裏面が紅色を帯びる。高さ15~30cmで花柄の基部に柄のない苞葉が3枚輪生し、深い切れ込みがある。山麓の木陰に多く自生する多年草で群生する。
「ニリンソウ」の清楚な白花が群生する様子は、まるで緑のじゅうたんの上に雪片を鏤(ちりば)めたようで、すばらしい景観である。花期は4~6月。
学名の「アネモネ」(属名)は「風の少女」の意。葉の形から「鵝掌草(がしょうそう)」の別名もある。花弁上のがく片が緑色のものを、品種「ミドリニリンソウ」という。
林床に「ニリンソウ」の花が咲き乱れる頃は、ちょうど新緑が萌え出す美しき季節である。頭上では「オオルリ」や「キビタキ」などの夏鳥たちがさえずり、そのコーラスに包まれての散策を定山渓でゆっくりと楽しめる。
「ニリンソウ」は「フクベラ」と呼ばれ、山菜として食用にされてきた。ただし、生で食べると皮膚や内臓がただれるので要注意。特に気を付けなければならないのは、猛毒のトリカブト類である。葉の形がよく似ているので、間違って食べて中毒死した人が多い。
「たのしみは 朝おきいでて 昨日まで 無かりし花の 咲ける見るとき」
これは幕末の歌人『橘曙覧(たちばなのあけみ)』の歌である。この歌にはつぼみから開花へと着実に生育する花の命への感動があり、一輪の花の開花にそそぐやさしいまなざしが、読む人をさらに感動させる。生命への新鮮な営みと成果にそっと心を寄せる。林床にひっそりと咲く花があっても、その花の誕生を新鮮な驚きと感動をもって迎える。そのまなざしが清々しく心に伝わってくる。自分の日常生活の営みの中にある、ちょっとした変化に感動し、それを心から楽しむ。これは私たちがどこかで忘れてしまった日本人の心の原風景ではないだろうか。
インフォメーション
- 科名・属名
- キンポウゲ科
- 花期
- 4~6月
- 花の色
- 白・緑
カテゴリ
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 4月、5月、6月
- 色
- 白、緑