オオタチツボスミレは定山渓で最も多く見られる種で、有茎(地上茎のある)スミレである。スミレサイシンと同じように、雪の多いところが好きで、やや湿った林床で時に群生する。
茎はやや株立ち状に数本出て高さ15~25cm。葉は円心形で明るい緑色。葉質は軟らかく、葉脈がくぼみ、緑が波打つ傾向がある。葉腋には櫛歯状に浅裂した托葉がつく。葉は緑色のまま越冬する。
花柄は茎頂や葉腋から出て、根元からは出ない。(タチツボスミレの花柄は、葉腋と根元からも出る)花は径2cmほどで5枚の花弁のうち、側弁2枚に毛はない。(アイヌタチツボスミレの側弁2枚の内側には毛が密にある)唇弁には、紫色の網目状の縦筋が入る。距は白色。(タチツボスミレの距は紫色)花期は5~6月。
葉は花が咲き終わったあとでも軟らかいので、山菜として食べられるが、大きな群生地であっても食べる分だけを採って、採り過ぎないようにしたい。葉、茎、花を食べるのだが、ゆでてお浸し、サラダ、酢みそあえ、ゴマあえ、酢醤油、三杯酢、卵とじ、煮びたし、汁の実としての食べ方が多い。生のまま天ぷらや、花は『すみれごはん』に使われる。
ヨーロッパではバラ、ユリ、スミレの3種の花は、特別に扱われて、聖母に捧げられ、神聖視されている。バラは美を、ユリは幻覚を、スミレは誠実・謙虚(ひかえめ)を表すとされる。ドイツやオーストリアでは、春の使者とされ、ウィーンの宮廷では、3月にドナウ河畔で初咲きのスミレを探し、それに挨拶をする風習があったという。フランスでは6世紀以来、スミレが人気を博し、盛んに栽培されている。ナポレオン一世の最初の妃ジョセフィーヌは、スミレをことのほか愛し、またナポレオン自身も、この花を好んだため、ナポレオンの時代には「皇帝お気に入りの花」として、フランス中を風靡したという。ナポレオンがエルバ島へ流されたとき、「春にスミレが咲く頃戻ってくる」といった話は有名である。スミレはわが国でも数多くの種類があり、山野草の中でも最も親しまれている植物である。特に西行、定家といった中世の歌人たちによって、オオタチツボスミレの仲間を中心に、素朴な花として盛んに読まれるようになって以来、日本人のスミレに対する親密さが顕著になっている。
♪ すみれの花咲く頃/初めて君を知りぬ ♪
宝塚歌劇団のシンボルと目される有名な歌もある。
インフォメーション
- 科名・属名
- スミレ科
- 花期
- 5~6月
- 花の色
- 青・紺・紫
カテゴリ
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 5月、6月
- 色
- 青、紺・藍色、紫