日本各地の山地林内や林縁のやや湿った所に自生する「ツルニンジン」は強烈な個性を持つ植物である。茎が他の物にからみついて伸びる蔓性の多年草で長さ2~3mになる。花は長さ3㎝ほどの釣鐘形で下向きに開く。先端が5つに裂けて反り返る。花の外側は淡緑色。内側に紫褐色の斑があり5枚の大きながく片に包まれて異臭がする。つぼみは緑色の風船のような形をしている。花粉はスズメバチの仲間に運ばせる。葉は短い枝先に4枚ずつ輪生状につき、長さ2~10㎝。両端がとがった楕円形で裏面は白っぽい。根は紡錘形で大きい。果実は忍者が使う手裏剣のような形になり、とにかくいろいろおもしろい形を見せてくれる個性的な植物である。花期は7~9月。別名『ジイノブ(爺雀斑)』。
ツルニンジンの和名の由来は、根が朝鮮人参に似ていること、茎がつるになることからである。別名の「ジイノブ」は長野県の木曽谷地方の方言で、「爺さんのそばかす」の意味。花の内側にある紫色の斑模様を指す。また蔓茎(つるくき)を折ると、粘り気のある白い乳液が出て悪臭があることから「クソニンジン」、「ヘクソニンジン」という強烈な悪名で呼ばれている。しかし白い乳液は昔から切り傷の薬として利用されてきた。根を乾燥させたものは強壮や去痰に薬効があるとされてもいる。漢名は『羊乳』である。
蔓茎の先端に伸びる新芽はやわらかく、山菜として利用されている。ゆでておひたしや和えものなどとして食べられ、悪臭はゆでると気にならなくなるという。油いためや焼肉の材料に使われるとこも多いそうで、韓国では栽培も盛んに行われているようだ。欲に根は優良食材で、一年中食べられているという。外皮を除き日干しにして乾燥させ保存しておいて、使うときに水でもどすというのが保存法だそうである。
『ツルニンジン』によく似たバアソブ(婆雀斑)は全体が小さめの蔓性多年草。花も『ツルニンジン』より小さく、外面の色がツルニンジンの淡緑色に対し、「バアソブ」は暗紫色。「バソブ」は湿原の周辺に少ないながら自生している・キキョウ科ツルニンジン属は日本にはこの2種のみである。
インフォメーション
- 科名・属名
- キキョウ科
- 花期
- 7~9月
- 花の色
- 白・緑白
カテゴリ
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 7月、8月、9月
- 色
- 白、緑