定山渓の森 Encyclopedia of flora and fauna
動植物図鑑

コキンバイ(小金梅)

 山地の樹林下や渓流沿いの岩場などに自生する。匍匐(ほふく)する根茎から高さ15㎝ほどの細い花茎を立てる多年草。バラ科コキンバイ属は日本には「コキンバイ」1種のみが生育している。

 葉は全て根生で互生し長い葉柄がある3出複葉。小葉の長さは2.5㎝前後で、さらに3~5中裂し、粗い鋸歯もある。やや厚く、光沢がある。頂小葉は菱状倒卵形、側小葉はゆがんだ卵形。時に緑色のまま越冬する。花は径長に1~3個つき直径約2㎝。長い柄がある。花弁は平開し5枚で鮮やかな黄金色。ふつう花弁の先は丸いが、まれに先がとがるタイプも見られる。花期は5~6月。果実は中に1個の種がある痩果で白毛が多い倒卵形。

 「コキンバイ」は定山渓の渓流沿いの岩場を飾り、癒しの回廊と呼ばれる散策路の人気者である。黄金色の粋な小花が日輪を仰いで、まるで華やぐ春を謳歌しているかのようである。育ちの良い箱入り娘といった風情で訪れる人たちの目を楽しませている。まさに花を見て、花となりやがて草となる・・・・。

<小金梅物語>

 むかしむかし、定山坊の温泉場を引き継いだ佐藤伊勢造夫婦のもとで働いていた男女がいた。二人は平岸に入植した仙台の伊達藩ゆかりのもの同士で共白髪までと、将来を誓った相思相愛の仲だった。
 しかし、運命の悪戯とでもいうのか、浮世の義理で二人は別れねばならない仕儀となった。

 そこで二人は別れに際して、お互いの面影を忘れないようにと、一つの鏡にそれぞれの顔、姿を映し合って、その鏡を夫婦岩のかたわらに埋めて涙を流した。それから十年余経って、そこに芽吹いてきたのがなんと黄金色にかがやく美しい花『小金梅』であった。

 それを見つけた伊勢造の妻が「鏡草」と名づけ、この世で夫婦になれなかった二人を思いやって、夫婦岩を、それ以降「二見岩」と呼ぶことにしたと伝えられている。

「小金梅物語」は「定山渓の植物と伝説」の一つである。

インフォメーション

科名・属名
バラ科
花期
5~6月
花の色
黄色

カテゴリ

分類
花・植物
季節
5月、6月
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