山地林内に生育する高さ15~30cmの多年草で、地下茎が伸びて群生する。根元から伸びる、長く細い柄の先に、無柄の3小葉が地表と平行につく。全体に無毛。小葉は質が薄く、長さ5~7㎝。扇の形といい、波のような曲線といい、葉の形は独特で目に焼きつく。小さな花が茎頂に、穂状につき、花弁やがく片はない。5~15個の長さの一定でない雄しべと1個の糸状の雌しべで一つの花となる。花期は5月下旬から6月。葉実は袋果で、長さ4mmほど。
真夜中の女王
「南部草」の名前は最初の発見地が南部藩(南部氏)の領地(岩手県)だったことによる。日本での自生地は岩手県と北海道の一部に限られる。
日本以外では北アメリカ西部に自生し、英名は『ミッドナイトクイーン(真夜中の女王)』。確かに、女王様のような気品を漂わせ、大人の匂やかさも醸して、定山渓の林床を飾っている。『ナンブソウ』に出会える定山渓でのひとときは、心と花とが戯れ、響き合う時間といってもよいのかもしれない。定山渓は山野草の宝庫。
風薫る定山渓の5月
山も水も草も気も、一気に美しくなる。ナンブソウが上品に花開き、波打つ葉にも好感がもてる。そんなナンブソウにゆるぎながら、美しい5月の自然を楽しめる定山渓には浪漫がある。そういえば「教育の第一は品性を建つるにあり」と『武士道』の中に書いた新渡戸稲造(1862~1933)は、南部藩士の家に生まれている。彼は札幌農学校在学中に、『ナンブソウ』を見ただろうか。
インフォメーション
- 科名・属名
- アカネ科
- 花期
- 5月下旬~6月
- 花の色
- 白
カテゴリ
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 5月、6月
- 色
- 白