山地林内に生育し、湿り気のあるアルカリ性土壌で、風通しの良い所を好む。寒冷地に適した多年草で、定山渓にも多く自生する。「クルマバソウ」は定山渓ではちょうどエゾハルゼミが鳴きだす頃に花開く。
「クルマバソウ」は根茎を長く横に伸ばして群生する。茎は20~40㎝の高さになり、四稜がある。明るい緑色の葉は、長さ1.5~4cmの狭長楕円形で先がとがり、6枚から10枚が車輪状について、それが3、4段になる。このような葉の姿かたちが車葉草の和名の由来である。花期は5~7月。
白い花を4~12個咲かせ、楚々とした美しさがある。花冠は漏斗状で先が4裂し、筒部が長い。合弁花で4深裂するのはアカネ科の特徴である。雌しべ1個、雄しべは4個。全体に「オククルマムグラ(奥車葎)」や「クルマムグラ」に似ているが、両種の花冠は皿状であり、クルマムグラの葉は、乾燥させると黒くなる。
「クルマバソウ」の茎、葉、果実には芳香成分のクマリンが含まれ、甘くいい香りがする。乾燥するにつれて芳香が強くなり、防虫効果も増す。葉はクルマムグラと違って、乾燥させても黒変しない。根茎は赤茶色で赤の染料になる。ヨーロッパでは「スイート・ウッドラフ(Sweet Woodruff )」と呼ばれ、古くからワインやビールの香料として利用されている。特に、フランス北東部のアルザスワインは有名である。
近年は胃の痛みを緩和する薬用ティーやハーブティーが人気のようだが、多量に服用すると幻覚や中毒症状を生じるので要注意である。また保管中の衣類や枕(ピロー)、匂い袋(サシェ)など芳香剤や防虫剤としての用途は広い。
現在北アメリカで栽培されているクルマバソウは北海道原産のものである。幽邃(ゆうすい)の定山渓で生きるクルマバソウは実に静かで関游たる境地、悠々自適してなんの束縛も受けない境地である。アメリカへの輸出される心配もない。
はつなつの明るく美しい緑と共鳴し、クルマバソウの花と語らい、戯れ、響き合う時間は定山渓での休日にふさわしい。好山水、好鳥花。渓谷の自然を逍遥(しょうよう)しながら過ごすひとときは、まさに心弾み心癒される時間でもある。
インフォメーション
- 科名・属名
- アカネ科
- 花期
- 5~7月
- 花の色
- 白
カテゴリ
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 5月、6月、7月
- 色
- 白