定山渓の森 Encyclopedia of flora and fauna
動植物図鑑

オドリコソウ(踊子草)

 「オドリコソウ」は名前のとおり、花の形が白い笠をかぶって踊る人の姿にそっくり。全体に端正な姿で麗しく凛々しく見えるが、葉は縮れて、しわが目立つ。山野の木陰や日の当たる林縁など、比較的生育環境を選ばないオドリコソウは日本全土に広く分布する多年草である。花色は白から淡黄色、淡紅色と変化がある。花のつけ根には蜜がたまっていて、吸うと甘いことから「スイバナ」「ミツスイバナ」の別名がある。花期は5~6月。

 茎は有毛で、断面が四角形。葉は縁に鋸歯がある卵形で先がとがり、十字対生する。花は上部の葉腋に輪生状につき、花冠は基部が曲がって立ち上がる。二唇形で上唇は帽子状、下唇は3裂して中央裂片はさらに2裂する。
 桜などの木々の花が咲き終わり、陽射しがますます強く感じられる頃、定山渓はひと雨ごとに緑が萌えてゆく美しき季節を迎える。さわやかな風がそよぎ、渓流がさざ波立つと癒しの回廊「二見定山の道」で元気溌剌(はつらつ)と踊り出すのが「オドリコソウ」である。この季節はオドリコソウを先頭に、草木鳥虫すべてが降り注ぐ陽光を糧に命を煌めかせてゆく。風光の瑞々しさが目に浸みる。緑の風に吹かれて一本の木、一本の草になれる時。定山渓の自然とともに生きている感動を味わえる時である。

「あの雲がおとした雨に濡れてゐる」

これは山頭火の句。遠くの山脈(やまなみ)に白い雲がかかり、時折全く苦にならない雨がぱらぱらと落ちてくる。すぐに太陽が雲の切れ目から顔を出し、きれいな虹の橋を架けてくれる。「山の見えないところでは、もう暮らせない」と山頭火はつぶやく。

「山のよさ。水のうまさ。足もとあやうく 咲いている踊子草。」

と続けて詠む。

明治15年(1882年)生まれの『種田山頭火』は北海道には足跡を残していないが、43歳で俗世間を離れ、托鉢姿で各地を放浪、流転の旅を続けながら句を書き留めた。オドリコソウには「虚無僧花(こむそうばな)」の別名もある

 より小さなピンクの花をつけて群生する「ヒメオドリコソウ(姫踊子草)」はシソ科オドリコソウ属の同じ仲間で、明治時代に渡来したヨーロッパ原産の帰化植物である。

インフォメーション

科名・属名
シソ科
花期
5・6月
花の色
白・ピンク

カテゴリ

分類
花・植物
季節
5月、6月
白、ピンク
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