クルマユリは高山や亜高山に咲く唯一のユリであり、荒々しい山の起伏に根をおろし、定山渓のような寒冷地にも適合した野生ユリの代表である。高さ40~80cmになる多年草。花期は6~8月。黄赤色の花弁は6枚、花弁にはふつう点在する濃い黄褐色の斑がある。猩々緋(しょうじょうひ)の色のおしべは6個、めしべは1個。花弁は大きく反り返り、花の径は5㎝ほど。花後、楕円形の果実ができる。
「百合」は「揺り」?
葉は大部分が茎の中央から下方に集まり、5~10枚が車輪状になって1~3段つく。この放射状についた葉を平安時代の牛舎の車にたとえたのが和名の由来である。早くから神聖な花、愛らしい花として日本人い親しまれてきた「ユリ」の語源は「揺り」で、風に揺れる様が印象的なことからと伝えられている。ユリの茎は長く伸び大きな花をいくつかつける。茎は細長く、花は重いので風がなくとも揺れ動く。いつもゆらゆらと揺れていることから「揺り」と」なった。
さらにユリには球根(鱗茎)があり、食用にもなる。この球根はたまねぎと同じく、多数の鱗片が重なりあっている。鱗片は「百個」も「合わさっている」ようだから「百合」となった。「揺り」は「百合」と書くようになり『万葉集』の時代から歌に詠まれてきた。花言葉の「純潔」「無垢」が示すようにキリスト教では、聖母マリアを象徴する花である。
かすかな涼風に揺れて、まるでおののくごとく、否、歓喜するごとくに山霊に応えているクルマユリの花はまさしく生気に満ちた大自然の中の百合である。花だけを見ると中国原産の史前帰化植物である「コオニユリ(小鬼百合)」にそっくりだが、葉のつき方がはっきりと違う。
クルマユリが定山渓の木下闇のなかで、野生とは思えないほどの華やかさと艶やかさで、ひっそりとしかし気高く優美に咲いている姿は芸術的であり、人の心を揺り動かす鮮烈な印象がある。
高貴な色を纏う花
クルマユリは平安時代から高貴なものだけに許された、禁色をまとっているといわれ、神聖視されてきた。
花びらの黄丹は皇太子の色。そこにちりばむ斑の黄櫓染(こうろぜん)は、嵯峨天皇以来、天皇だけの絶対禁色。おしべを包む深く渋い赤色の赤白橡(あかしろつるばみ)は丹色ともいう古代の赤で、魔除けの色ともいわれ、これは上皇の色と定められている。
高貴と陰謀の色を渦巻きながら、艶めかしく咲くクルマユリを炎夏の定山渓で篤(とく)とご覧あれ。。
インフォメーション
- 科名・属名
- ユリ科
- 花期
- 6・7・8月
- 花の色
- 橙
カテゴリ
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 6月、7月、8月
- 色
- 橙