2枚のまるいハート形の葉と茎と、左右に分かれる葉脈、それらを含めた全体の姿が鶴の求愛時の舞に似ていることから『舞鶴草』と命名された。カタカナ表記は、「ツル」であるから「マイズルソウ」ではなく「マイヅルソウ」となる。
「鶴の舞」に見立てられたマイヅルソウは、高さ10~25㎝の多年草。亜高山帯のやや湿った樹林下に、足の踏み場もないくらい群生する。花期は5~7月。果実(液果)は、径5~8㎜の球形で秋に赤色に熟す。
「マイヅルソウ」の姿は、確かに翼を広げ、首をまっすぐに伸ばして舞うタンチョウ(丹頂)の優雅な求愛ディスプレイを想起させる。北海道の鳥であるタンチョウは日本産ツル類中、最大の種で「求愛ディスプレイ」とは、雄と雌が向かい合いながら、翼を広げたり、待っているように見えるので、求愛ダンスともいう。
花茎にふつう2枚の葉が互生する。葉が1枚の茎には花がつかない。葉身は長さ3~10㎝の卵心形で先がとがる。上の葉が小さく、それぞれの葉の基部は深い心形(ハート形)。花は総状花序に20個ほどつき、花被片は透明感のある白色で、4枚ありそり返る。太い雌しべは1個。雄しべは4個、花から飛び出しているように見える。
マイヅルソウの見どころは夏頃から大きくなる果実(液果)の模様の変化である。はじめ果実の表面は、黄緑色と赤褐色が絶妙のバランスでまだら模様になる。やがて、秋になって熟すとぜんたいが真っ赤になり、太陽にかざすと、透き通って、宝石のルビーのように美しく輝く。
マイヅルソウの群生する様子を見れば、生命のつながりが縦横へ延びて屈託がなく、不安や孤独感とは無縁の豊かさを感じる。太陽に喜び、風に喜び、雨にも喜んで舞い踊るマイヅルソウに、自然のまま、ありのままでも美しく豊かに生きていけることを教えられる。
インフォメーション
- 科名・属名
- クサスギカズラ科
- 花期
- 5~7月
- 花の色
- 白色
カテゴリ
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 5月、6月、7月
- 色
- 白