太い根茎が横に伸び、茎には白い軟毛が散生する。茎は対生し、長さ10cm前後の広卵形~卵状楕円形で羽状に浅く裂け、不揃いの粗い鋸歯があり、先がとがる。山地の岩場やその周辺の日当たりが良く、やや湿ったところに生育する多年草。高さが40~70cm、花期は7~8月。
本州北部から北海道に分布。『マルバキンレイカ』には『エゾキンレイカ(蝦夷金鈴花)やオオバオミエナシ(大葉女郎花)』の別名がある。また、定山渓では『ジョウザンオミナエシ(定山女郎花)』と呼ばれる伝説の花でもある。
花冠は直径5㎜ほどで、先が5裂して基部近くに小さな距がある。雄しべ4個、雌しべは1個。黄色の細かな花が、集散花序に多数つく。花には悪臭に近い臭気がある。秋の七草のひとつとしてあまりにも有名なオミナエシと同様の独特の臭気である。
渓谷の夏の青空、滴るような緑
岩を噛んで流れる碧水
強い日差しに照りはえる川面の
目もくらむような白さ
マルバキンレイカの黄花が輝きを放つ。
定山女郎花物語(丸葉金鈴花)
むかしむかし、定山渓温泉が今よりもずっとずっと華やかだった頃のこと、源氏名を鈴花という芸者さんがいました。丸顔で愛嬌のある鈴花は売れっ妓芸者でしたが、ある温泉旅館の若旦那に恋をしていました。ところが若旦那は鈴花を捨てて、別の女性と結ばれ、恋に破れた鈴花は悲しいかな河童淵に身を投げてしまいました。山吹襲(やまぶきがさね)の衣が岩の上に残されましたが、衣はやがて朽ち果て、その跡には山吹色の鈴のような花をたくさんつけた丸い葉の植物が生えてきたということです。
それから毎年咲き続けるこの花をだれ言うともなく、定山女郎花(ジョウザンオミナエシ)と呼ぶようになりました。定山女郎花の咲く岩は、むかしは夫婦岩と呼ばれていたのですが、このことがあって以来、夫婦になれなかった鈴花の思いを汲んで二見岩という名前に呼び変えられたといわれています。この場所は伊勢の二見が浦の景観によく似ていたこともあり、旅館の若旦那が二つの岩に注連縄(しめなわ)を張り、鈴花が身を投げた岩の上には祠(ほこら)を建て、毎年、鈴花の命日にひとりだけの祭りをして祈りを捧げていたそうですが、今はもう祈る人もなく、定山女郎花だけが金の鈴のような花をたくさん咲かせています。
渓谷の夏の青空がこれほど似合う花もそうはないでしょう。二見岩に咲く定山渓を代表する花のひとつ、定山女郎花(丸葉金鈴花)にあなたもぜひ一目会ってやって下さい。
インフォメーション
- 科名・属名
- スイカズラ科
- 花期
- 7~8月
- 花の色
- 黄色
カテゴリ
- 分類
- 花・植物
- 季節
- 7月、8月
- 色
- 橙、黄