定山渓の森 Encyclopedia of flora and fauna
動植物図鑑

フデリンドウ(筆竜胆)

 淡い青紫色でラッパ形の小さな花は山野草愛好家たちに人気がある。高さ5~10㎝ほどの越年草で夏に親株は枯れ、種が地面にこぼれて秋に発芽し、緑色の苗の状態で越冬し、春に花を咲かせ、晩春から初夏に結実する。山野の日当たりのよい所を好み、乾燥に対する抵抗力が強い。『フデリンドウ』はつぼみの形が、筆の穂先によく似ていることからの命名である。花期は5~6月であるが、定山渓では近年4月に花開くことが多くなっている。

 茎葉は対生し、厚く肉質で長さ5~15㎜の卵形~広卵形で、柄がなく、先がとがる。葉の縁は白く細かい突起がある。裏面はしばしば赤褐色を帯びる。同じ仲間の「タテヤマリンドウ(別名 ハルリンドウ)」と違って、根元に根出葉(ロゼット)をつくらない。直径15㎜の花冠(個々の花弁が合着するものを合弁花冠または単に花冠という)は5裂し、裂片の間に小さな複裂片がある。がく筒も5裂し、先は鋭くとがる。花は光に敏感で、日が陰るとたちまち花を閉じてしまう。
 フデリンドウの花色には変化が多く、白花に『シロバナフデリンドウ』、淡紅花には、『トキイロフデリンドウ』の名がついている。

 リンドウ科リンドウ属の植物は、世界の温帯や山岳地帯に広く分布し、約500種が知られ、日本には13種がある。
リンドウの仲間は、「ゲンチオピクリン」という物質を含有し、全草に苦味がある。特に根茎は苦味が強く、薬効もあって、古代から殺菌や強壮剤として重宝されてきた。ヨーロッパではそのエキスをゲンチアン・ビターと呼んで健胃剤としている。
 キニーネ(マラリア治療薬等々の解熱剤)が発見されるまでは、その役割を担い、ホップが使わられるまではビールの苦味をつけるのにも使われていた。漢方では竜胆の根茎を乾燥させたものを竜胆(りゅうたん)と呼び、健胃剤として食欲不振や消化不良に用いる。

 リンドウの和名は漢名の「竜胆」の音読みの転訛したものといわれている。リンドウの仲間は、秋に花を咲かせるものが多いが、『フデリンドウ』は春に花を咲かせるリンドウ属の代表である。

インフォメーション

科名・属名
キキョウ科
花期
5-6月
花の色
白・紺、藍色

カテゴリ

分類
花・植物
季節
5月、6月
白、紺・藍色
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